Project  | 東京国際空港 第2ターミナル
国際線施設建築工事プロジェクト
Project Story

昼夜入替での施工によって、「生きた空港ターミナル」を生まれ変わらせる。

Prologueプロローグ

世界第5位、8000万人以上(2019年度実績)の年間利用者数を誇る東京国際(羽田)空港。
2017年、国際線需要が増加すると見込まれることから、国内線第2ターミナルを国際線の就航に対応させるべくスタートしたのが「第2ターミナル国際線施設建築工事プロジェクト」だ。国際線・国内線間の乗り継ぎは、これまで別のターミナルへ移動する必要があったが、本工事によって利便性が大きく向上する。

この大規模工事において、住友電設は幹線・動力工事等の増築・改修を担うこととなった。
請け負った工事の完工金額は、合計で約36億円。
70年以上に及ぶ住友電設の長い歴史の中で見ても、大きなプロジェクトとなる。
今回特筆すべきは、稼働中の「生きた空港」での施工となる点だ。保安警備が非常に厳重な空港においては、たとえば工具ひとつ現場に置き忘れただけでも飛行機を出航させることができなくなる。そしてその影響は、全世界の空港に及ぶ。

1978年から長年東京国際空港の各種工事に携わり、空港に常駐するスタッフもいる住友電設では、その経験を活かし、空港独自のルールに対応しながら施工に取り組んでいった。

Memberメンバー

プロジェクト部長

森 康夫 MORI YASUO

(1989年入社)

東部本部

現場代理人

高木 一聡 TAKAKI KAZUAKI

(1996年入社)

東部本部

改修チームリーダー

小野 和芳 ONO KAZUYOSHI

(1996年入社)

東部本部

増築チーム

小城 啓助 KOJO KEISUKE

(2014年入社)

東部本部

人員不足の課題に
ピークシフト、昼夜入替工事で対応。

視野が広く柔軟性に富んだ
現場代理人を任命。

技術面でのリーダーであるプロジェクト部長に就任したのは、豊富な現場経験を有する森だ。しかし、「生きた空港」という特殊な現場であることに加え、完工金額もかなりの額となる今回のプロジェクトについて「不安がなかったと言えば嘘になる」と森は言う。今回のプロジェクトを完遂するためには、メンバーの選出が最初の鍵となった。まずは現場代理人として、高木に白羽の矢を立てた。本プロジェクトのような大規模現場に求められる現場代理人の資質として、森は次のように話す。「大きな現場で人を動かすには、何より『器』が必要なんです。広い視野で全体を見通し、臨機応変に対応していかなければなりません。その点で、今回は高木が適任だと考えました」。また、他の主要メンバーについても、エントリーをかけて調整していった。特に欠かせないピースとなったのが東京国際空港に常駐する小野だ。空港特有のルールに精通していることから、改修チームのリーダーに任命した。さらに、若手であっても特定のスキルに秀でていれば積極的に登用した。たとえば増築チームに加わった小城は、現場作業員を牽引していく進行管理を得意とする。その他にも、2017年10月から2020年2月までの長きにわたる工期の間、必要に応じて段階的に人員を揃えていった。

現場代理人の高木は、「森プロジェクト部長が選抜したメンバーの力をいかに引き出すか」が自分の仕事だったと語る。住友電設のスタッフを中心とした監督は総勢20名ほど、作業員も含めると1日最大100名ほどが稼働する大所帯だ。規模が大きくなるほど、他者からの「指示待ち」の空気になりやすい。「各人の当事者意識を高めるために、本プロジェクトの意義とそれぞれの役割をしっかり伝え、日々の夕礼や毎週の所内会にてフィードバックを行っていった」という。

プロジェクト現場マップ

ピークを分散させる手法で、
人員不足に対応。

建築需要の高まりによって業界全体で人手不足が叫ばれて久しいが、本プロジェクトにおいてもそれは同様だ。森によれば「本来であれば1.5倍の作業員がいてもおかしくない現場」だったが、限られた人数で進めていかなければならない。そこで、現場代理人である高木がとったのは、「ピーク時の作業量を分散させる」という手法。工期の中盤に訪れる山場の作業を、序盤・終盤にシフトさせて全体的にならすスケジュールを緻密に組み上げていった。 もうひとつの施策が、「昼夜入替体制」での施工だ。今回の現場では、設備や内装の仕上げ工事など、さまざまな工事会社の作業員3,000人以上が現場を行き交うことになる。昼間は、「お互いぶつからないように歩く必要があった」というほど。一方、夜間であれば他社の作業員が1/10程度に減り、作業しやすくなる。日中稼働する施設での作業となる改修チームはなおさらだ。そこで、昼夜入替体制での施工を行うことで、効率化を図ることとなった。

チームが昼と夜で二分されることで、引き継ぎにおいても工夫が求められた。たとえば万一、夜間の工事箇所でトラブルがあった場合、昼のチームに状況が伝わっていなければ対応が後手に回ってしまう。そこでタブレットを活用して作業記録と施工写真を毎日共有することで、スムーズな引き継ぎを実現した。「これまでは施工写真を撮影しても、個別のカメラやPCにしかデータはありませんでした。しかし、今回Webを介して瞬時に共有できるようになったのは大きいです」と小野。引き継ぎのために、次のスタッフの到着を待つ必要もなくなったことから、ムダな残業の削減にも役立ったという。勤務時間もWebグループウエアで管理しながら、「休みにくい空気」をつくらないよう取り組んでいった。

確実・丁寧な改修チームと
ダイナミズムの増築チーム。

万が一にも空港をストップさせない、細心の手配。

今回住友電設が担ったのは、サブ変電所の2カ所増設とそれに伴う幹線・動力工事だ。空港にある特高変電所から約800mと約1,200mの位置に増設される変電所に向けて、高圧幹線ケーブルを敷設していく。ケーブルを走るルートは既存ターミナルの天井裏や車路となるため、小野率いる改修チームは夜間工事中心の対応となった。たとえば幹線延線工事を夜10時に開始しても、朝4時には元通りにして撤収することが求められる。1本のケーブルは100mにも及ぶが、それをフロアに放置していては空港の運営を妨げてしまう。その苦労について、小野は次のように語る。「天井裏には多種多様なケーブル、制御線、水道管などが走っていて、接触によって障害を与えれば空港のシステムに影響を与える可能性もあります。そのためすべての現場について、お客様とゼネコン立ち会いのもと事前調査を行い、想定されるリスクを見込んだ作業計画書を作成していきました。その数は250件以上にもなります」。万が一トラブルによって工事を中断せざるを得ない状況になった場合も想定して、そこから原状復帰するまでの時間もバッファに含んだスケジュールを組んでいったという。「万が一にも空港の機能を止めるわけにはいきませんから」。

小野は空港特有のルールについて、チームメンバーにこと細かく共有し、厳守させた。空港には一般のお客様が往来する一般エリアと、手荷物検査を受けなければ入れない保安エリア、飛行機のある制限エリアに分かれている。特に一般エリアから中のエリアに入る際には、航空保安上厳しい制限が設けられている。工事関係者を装った部外者が凶器になりえる道具を持ち込み、ハイジャックやテロに利用されるケースも想定されるためだ。その他図面の管理、滑走路上の走行ルールなど、小野の知識はプロジェクト全体をスムーズに進行させるために役立てられた。

現場体制図

一般的なビルの50倍以上にもなる幹線工事。

もう一方の増築チームの性格について、高木はこう話す。「稼働中のエリアを担当する改修チームには、確実性・慎重さ・丁寧さが求められましたが、増築チームはもっとダイナミックです。変電所や発電機室の構築、1,100本に及ぶ低圧幹線の敷設など、高い電気系スキルとスピード感が求められるチームでした」。一般的なオフィスビルで用いられる幹線は20本ほどであると言えば、1,100本という数字の尋常でないボリューム感が伝わるだろうか。現場代理人の高木も「ここまでひたすら幹線を引く現場は初めて」とこぼすほど。ゴールが見えにくい状況でも的確に進捗管理を行うべく、ケーブルラックや幹線の本数について日々の目標値を設定していった。

増築チームにおいてはゼネコンやサブコンとの連携も重要になった。ゼネコンによる躯体工事が終了した後、サブコンが工事を行っていくことになるが、住友電設はその先頭に立って工事に取り組むことになった。「自分たちは『受電』という大きな役割を担っていましたから」と小城は言う。流れとしては、住友電設が変電室に電気を送ってから、空調・水道等のサブコンが試験・調整を行っていくことになる。1,100本の幹線工事という作業ボリュームを課せられているだけに、作業効率は追い求めたいところ。しかし、自分たちの効率だけを考えていては、各サブコンの工事に支障をきたし、プロジェクト全体に遅れが生じてしまう。そのため、早期の工程打ち合わせと綿密な調整、現地確認、迅速な対応を心がけていき、「目標に向かって現場全体が一体感を生むことができたと思います」と小城。一大プロジェクトだけに、どの工事会社も経験豊富なリーダーを立ててきている。そうした熟練のプロに対して「若手ながらよく渡り合ってくれた」と森は振り返る。

本プロジェクトから羽ばたき
新たな現場代理人へ。

東京国際空港で積み上げてきた
信頼。

増築と改修という全く性格の異なる2つのチームを取りまとめ、見事にマネジメントし切った高木は、29カ月にわたる工期を無事故・無災害で竣工できたことを「誇りに思う」と話す。プロジェクトメンバーは、部・課を超えて選抜されたため、現場ではほとんどが初対面。そのメンバーでやりきれたことは非常に大きい。「工事発注者からも『さすが住友電設』との言葉をいただきました。皆の努力と成果が認められた証だと思います」と力を込める。 改修チームのリーダーとして大きな役割を果たした小野は、プロジェクト終了後も、他の常駐社員とともに東京国際空港を支えている。「東京国際空港では、住友電設の先輩方が代々積み上げてきた信頼と成果があります。それを自分の代で損なうことなく、これからも常駐社員や協力会社と共に従事していきたいと思います」。

プロフェッショナルの背中を
見て学ぶ。

森は今回プロジェクト部長としての職務に従事する一方で、施工図の作成についてかなりのボリュームをフォローしていた。「電気系統に関する知識の豊富さには驚かされました。図面の作り方や電気室の組み立て方についても細かいところまで突き詰められていて。見せていただけて良かったです」と小城は言う。「特別賞与をもらってもいいぐらい働いたんじゃない?(笑)」と森はおどけるが、プロフェッショナルとしての背中を見せたことは間違いない。 その森をはじめ、さまざまな先輩たちの姿を見て急成長したのが小城だ。「今回のような大規模プロジェクトを無事に竣工できて、だいぶ度胸がついたと思います」と本人が話す通り、小野も「2年前とは印象が全く違う」と評価する。現在、小城は新しい現場に就いているが、そこでは現場代理人として独り立ちしている。「今回の東京国際空港のプロジェクトから羽ばたいたメンバーから、次の大規模プロジェクトを担うリーダーが生まれてくれれば」という高木の想いは、遠からず叶うに違いない。

工事概要
工事 東京国際空港第2ターミナル国際線施設建設工事
事業 日本空港ビルデング株式会社
受注 大成建設株式会社
2017年10月~2020年3月
延べ床面積 増築67,288㎡
改修21,741㎡
工事内
  • 受変電設備工事
  • 幹線動力設備工事
  • 非常発電機設備工事
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