Project  | ウィンドファームつがる建設工事プロジェクト Project Story

働き方も、工期も守りながら日本最大級の風力発電工事プロジェクトを完遂。

Prologueプロローグ

海に囲まれた島国である日本は、風に恵まれた土地が多い。
本州の最北部に位置する青森県つがる市の今回の現場も、そんなスポットのひとつだ。

次世代を担う再生可能エネルギーとして、それまで主流だった太陽光発電に代わり、近年注目を集めている風力発電。デンマークをはじめとする欧米の風力発電先進国に比べて後れをとっていた日本だが、大規模プロジェクトが日本各地で計画されている。

なかでも日本最大級の風力発電プロジェクトとして2017年よりスタートしたのが「ウィンドファームつがる建設工事」だ。
発電容量約121.6MW、風車38基、地中送電管路の総距離約32kmというこの一大プロジェクトにおいて、住友電設は自営線工事(地中)、集電線工事(地中、ケーブル)、変電所工事、通信工事、風車内電気工事を担うこととなった。

もちろん、1部門では到底まかないきれない。多部門が連携するプロジェクトチームが組織されることとなった。

Memberメンバー

プロジェクト統括リーダー

河村 寛 KAWAMURA HIROSHI

(1987年入社)

送配電事業部

風車電気工事担当

平山 英紀 HIRAYAMA HIDENORI

(2017年入社/キャリア採用)

環境ソリューション事業部

33kV集電ケーブル工事担当

平田 祐介 HIRATA YUSUKE

(2008年入社)

送配電事業部

送電線管路工事担当

大木 岳洸 OHKI TAKEHIRO

(2015年入社)

送配電事業部

32kmに点在する現場間で、
いかにチームワークを形成するか。

1人1台タブレットを支給。

住友電設のアドバンテージは、自営線(地中)工事から、集電線(地中、ケーブル)、変電所関連工事、通信工事、風車内電気工事まで、多岐にわたる専門部署が互いに連携をとりながら対応できることにある。とはいえ、プロジェクト着手当時は風力発電関連工事そのものが少なく、ましてやこれだけの大規模プロジェクトは過去に例がない。プロジェクト統括リーダーの河村は、まずチームワークの形成を重視したという。「自営線管路が32kmにも及び、現場や風車が広範囲に点在する今回のプロジェクトでは、コミュニケーションがなかなかとれないという問題がありました。何かトラブルがあったとき、その内容を即座に各作業所へ展開するにも連絡手段が電話しかありません。それに、電話だけではどうしても意思疎通が不十分だと感じていたんです」。

多様な専門部署が連携する際に問題となるのが、無事故・無災害達成に向けた安全管理の意志統一だった。本プロジェクトでは、元請けである鹿島建設の厳格に管理された安全ルールを踏まえて、安全基本ルールと独自の安全ルールを迅速に定着させる必要があった。「そこでタブレット端末を1人1台ずつ導入し、ビジネスチャットツールを活用することにしたんです」。これによって、各現場との連携がスムーズになったのはもちろん、現場の状況写真を共有することで、危険ポイントの注意喚起や作業内容の確認も含めて密にコミュニケーションをとることができたという。「あとは、毎日の朝礼が数少ない作業員との対面の機会となったので、そこでできるだけ声をかけていくように心がけました。工事ピーク時のハードな状況のなかでも、若い社員に『ちゃんと見ているよ』と伝わるように」。

プロジェクト現場マップ

厳しい状況のなか、働き方改革モデルを実現。

本プロジェクトで最大の課題となったのは、その工期だった。河村によれば、調査工事を含めて「本来3年半~4年はほしい」ところだったが、実際の工期は3年。そのため、12~2月の厳冬期間も休みなく工事を進める必要があった。「特に最初の冬が厳しかったですね。現場は苦労したと思います。毎日氷点下ですし、地吹雪で視界は真っ白、地面も表面から30cmほどまで凍結しているなか、掘削作業を進めなければなりませんでしたから」と河村は振り返る。冬の間は、地元の協力会社のアドバイスのもと、慎重に工事を進めていったという。

厳しい状況ではあったが、過度な残業による解決は望ましいものではない。本プロジェクトは『働き方改革モデル現場』に指定されていたのだからなおさらだ。先述のタブレット活用は作業の効率化に大きく貢献したが、規定の残業時間に収めるには、それだけでは足りない。リーダーの河村は、各所に支援をとりつけるため奔走したという。「残業時間が月40時間を超えず、また月6回以上の休日が取得できるように、各事業部・各部署に応援を要請しました。こうした当社の働き方改革には、鹿島建設さんも快く理解を示してくださり、休日管理や個人の残業時間にも気配りしていただいたのは本当にありがたかったですね」。

海外の技術者と、風車建設担当会社と
社内外の連携を丁寧にとっていく。

風車電気工事 日本とは異なる手法を、しっかりヒアリング。

今回、住友電設が担った工事は、風車電気工事、集電管路工事とそこに通す33kVケーブル工事、自営線管路工事、変電基礎・外構工事、光通信工事となる。住友電設内でも経験者の少ない風車電気工事には、普段、工場の電気計装工事を行っている平山があたった。風車のタワー部分は、4分割された状態で納入される。作業では、内側にあらかじめ敷設されたケーブルをジョイント部分でつなげるために、風車の中を鉄格子で昇る必要があったという。「100mの高さを毎日昇ることになるので大変でしたね(笑)。多いときには一日2~3回昇降することもあり、おかげで体力がつきました」と平山は笑う。

風車は大きいものの、制御盤などそれぞれの機械装置の規模自体は本来の業務と変わらない。風車電気工事は初めてながらも、海外の風車メーカーの技術者よりレクチャーおよび検査を受けながら作業を進めていった。「苦労したのは、風車というよりも文化が異なる海外の技術者とのコミュニケーションの方かもしれません」。日本では疑問を感じるような手法でも、海外では一般的であることも少なくない。基本的には通訳を介し、ときには自らのスマートフォンの翻訳アプリを駆使しながら、自分が理解できるまで徹底的にヒアリングすることを心がけて業務に取り組んでいった。

現場体制図

33kV集電ケーブル工事 個の力の集合こそ、住友電設の強さ。

風車で発電された電力を集めるための集電管路には、総長38kmもの33kVケーブルが敷設された。「これだけのボリュームを無事故無災害で終えることができたのは、各風車の鹿島建設担当スタッフの皆さんとの事前調整があってこそ」と話すのは、33kVケーブル工事を担当した平田だ。風車建設との同時並行となったこの工事では、現場ごとに作業環境が大きく異なっていた。「風車建設作業が優先されるため、その隙間を縫ってケーブル敷設の工程管理を行うのは、本当に苦労しました。また風車へのケーブル引込については、風車の基礎部分だけがある建設前の状態か、すでに建設された状態かで段取りが大きく変わります。建設後は、風車内部に多数の機器が設置された状態です。ケーブルとの接触によって、これらの機器を破損してしまわないよう慎重に敷設ルートを選定する必要がありました。どの風車も条件が異なるため、その都度作業計画を作成していきました」。

敷設区間の掘削から管路導通試験、ケーブル敷設、絶縁測定、防食処理、埋戻しまで、現場ごとに異なる作業内容と手順を協力会社とともに一つひとつ確認しながら進めていくことは、決して簡単ではなかった。「ただ、各分野のプロフェッショナルが集まっていたので、不安はありませんでした。現場でトラブルが発生しても、さまざまな角度から意見をいただけてとても頼もしかったです」。個の力が集合することによって、難しい条件の施工も可能にする。「それが住友電設の強さ」だと、平田は言う。

送電線管路工事 先輩からのサポートを受けながら、少しずつ成長。

風車から集電された電気は、自営線を通って変電所へと送られる。自営線の管路工事を担当した大木は、入社からわずか3年での抜擢となった。田んぼや畑などの間を通す集電管路工事とは異なり、自営線管路工事は主に道路上での土木工事となる。マンホールとマンホールの間を管路でつなげ、そこにグループ会社である住友電気工業が154kVケーブルの敷設を行った。短期間での工事となった本プロジェクトでは、数多くの施工班を投入し、マンホール工事と管路工事を同時に管理する必要があった。

スタッフ内では最年少だった大木。河村は、「当初は苦労したと思います」と気遣う。「恥ずかしながら、細かいミスや失敗もありました。しかし、諸先輩方からのアドバイスなど、周囲の方から仕事のやり方や技術を吸収することで、少しずつ改善していけたように思います」。一つひとつの工事が無事に進むことが、確かな自信になっていく。それにつれて、作業当日の進捗報告や作業上の問題点の共有、指示・連絡事項の伝達など、関係各位へのコミュニケーションもスムーズに行えるようになっていったという。

困難なプロジェクトを完遂。
メンバーは、すでに新たなプロジェクトへ。

誰一人ドロップアウトすることなく
完工。

厳しい状況のなか、3年間誰一人ドロップアウトすることなく無事故無災害で日本最大級の風力発電工事をやり遂げられた要因を、河村は次のように振り返る。「組織のチームワークのおかげだと思います。大木をはじめとする若いスタッフを、年代が近い先輩たちがフォローしてくれる体制になっていたことが大きいです」。また、本プロジェクトにおいては、部門を超えた連携はもちろん、関係する各社とのやりとりにも目を見張るものがあった。「平山も平田も、現場での鹿島建設さんや関係会社の方々とのこまやかなコミュニケーションが素晴らしかったと感じています」。元請けの鹿島建設およびクライアントであるグリーンパワーインベストメントからは、プロジェクト終了後「よくこの工期で収めてくれましたね」とねぎらいの言葉があったという。河村は「発破をかけていただいたおかげ」と笑うが、誰より広く社内外に目配りしていたリーダーが大きな役割を果たしたことは、想像に難くない。

本プロジェクトからの新リーダー誕生を期待。

本プロジェクトを経て、それぞれの参加メンバーたちは、すでに新たなプロジェクトに活躍の舞台を移している。平田は、現在山形県・米沢市で風力発電工事の現場に加わっているという。「つがるでの経験があったからこそわかることがあります。お客様にも、自信をもって説明できていますね」。また、平山も新たな風力発電工事プロジェクトに参加している。コロナ禍の影響によって一時中断とのことだが、現在は作業に向けたトレーニングのかたわら、コツコツと英語の勉強を始めているという。「新しいプロジェクトでは、英語の回路図を協力会社の皆さんが見やすいように調整して共有できたらと考えています」。これからも日本各地で活発化していきそうな風力発電。その大規模プロジェクトにおいては、各事業部の連携によって多様な技術力を提供できる住友電設の強みが活かされる。河村は言う。「今回のプロジェクトで経験を積んだ若手のなかから、将来のリーダーが生まれることを期待しています」。

工事概要
工事 ウィンドファームつがる建設工事 (121.6MW=3.2MW×38基)
グリーンパワーつがる合同会社
事業 株式会社 グリーンパワーインベストメント
受注 鹿島建設株式会社
受注形 社内JV(電力本部、環境ソリューション、通信システム事業部)
2017年10月~2020年7月 (31ヶ月)
※売電開始 2020年4月
工事内
  • 154kV用管路工事(32km)
  • 33kVケーブル工事(39km)
  • 通信工事(71km)
  • 変電所基礎工事3箇所
  • 風車内電気工事38基
  • 舗装工事一式 他
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