2018.11.07 リリース
大電流・高圧絶縁導体の開発
住友電設は、国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(QST)により建設中であるJT-60SA(Japan Atomic Energy Research Institute Tokamak-60 Super Advanced)計画において、核融合発電に必要な強磁場発生装置に給電する導体およびその貫通処理方法について開発いたしました。
JT-60SA計画は、将来を担う大型エネルギーとして期待されている核融合発電研究のための国家プロジェクトです。核融合発電は、核融合を起こす際に発生する膨大なエネルギーを利用し、発電するもので、この燃料となる重水素と三重水素は、地球上の海中に豊富に存在し、数千年は枯渇することがないといわれています。
この核融合には、ポロイダル磁場コイル(TF)で構成されるトカマク炉と呼ばれる強磁場発生装置が必要で、トカマク炉は厚さ2mのコンクリートで囲われた本体室に設置されています。当社は、このトカマク炉内の超電導コイルに6.6kV、25.7kAの大電流を給電する導体の開発および敷設を担当いたしました。
1)概要
TF用導体の納入範囲は、本体室の外にある極性切替器から導体を延長し、図1に示す本体室内のTF1~TF14の各コイルの手前までの敷設で、P・N各1極が3組の合計6本の導体を800φ-2mの貫通孔2箇所に敷設するものです。
図1 TFコイル電源回路図
2)施工における制約と必要条件
導体サイズと配置および仕様(絶縁処理)については、①本体室内が放射線管理区域である ②φ800の貫通が2箇所、貫通させる導体は6本であり3本/孔である ③本体室内や放射線遮蔽壁等の空間上の制約があるなか、電圧降下、強度、絶縁耐力、沿面放電等の条件を満たすこと、かつ施工性の良さが求められました。
また施工においては、放射線管理区域であることから、①貫通孔を長時間解放できない、②水を持ち込めないため貫通部の穴埋めができないなど多くの制約がありました。
3)導体の開発および施工
上記の条件を満たす導体サイズと配置および絶縁処理法について検討し、下記の仕様による機器を開発しました。
・導体サイズ 320mm×90mm
・配置 導体間の離隔230mm(本体室側 390mm)
・絶縁処理
1層目:ポリイミドテープ
2層目:自己融着シリコンゴムの高圧絶縁用テープ
3層目:紫外線硬化FRPプリプレグシート
の3層構造とする
施工においては、SUS製スリーブに導体3本を配置して無収縮モルタルを充填するまでの作業を予め工場で行い、現地作業を軽減するなど施工方法の改善を図り、厳しい制約下での施工を可能としました。(図2、写真1参照)
図2 プレハブ導体(3導体)
写真1 プレハブ導体(3導体)
今回、当社が検討および開発を行ったTFコイル用の大電流・高圧絶縁導体は、客先仕様書の電圧降下を満足させるだけでなく、安全面、品質面においても優れていると評価いただき、その貫通処理方法も含め、核融合発電において採用が期待できるものとなりました。今後も核融合発電の発展に貢献できるよう取り組んでまいります。
JT-60SA計画は、将来を担う大型エネルギーとして期待されている核融合発電研究のための国家プロジェクトです。核融合発電は、核融合を起こす際に発生する膨大なエネルギーを利用し、発電するもので、この燃料となる重水素と三重水素は、地球上の海中に豊富に存在し、数千年は枯渇することがないといわれています。
この核融合には、ポロイダル磁場コイル(TF)で構成されるトカマク炉と呼ばれる強磁場発生装置が必要で、トカマク炉は厚さ2mのコンクリートで囲われた本体室に設置されています。当社は、このトカマク炉内の超電導コイルに6.6kV、25.7kAの大電流を給電する導体の開発および敷設を担当いたしました。
1)概要
TF用導体の納入範囲は、本体室の外にある極性切替器から導体を延長し、図1に示す本体室内のTF1~TF14の各コイルの手前までの敷設で、P・N各1極が3組の合計6本の導体を800φ-2mの貫通孔2箇所に敷設するものです。

図1 TFコイル電源回路図
2)施工における制約と必要条件
導体サイズと配置および仕様(絶縁処理)については、①本体室内が放射線管理区域である ②φ800の貫通が2箇所、貫通させる導体は6本であり3本/孔である ③本体室内や放射線遮蔽壁等の空間上の制約があるなか、電圧降下、強度、絶縁耐力、沿面放電等の条件を満たすこと、かつ施工性の良さが求められました。
また施工においては、放射線管理区域であることから、①貫通孔を長時間解放できない、②水を持ち込めないため貫通部の穴埋めができないなど多くの制約がありました。
3)導体の開発および施工
上記の条件を満たす導体サイズと配置および絶縁処理法について検討し、下記の仕様による機器を開発しました。
・導体サイズ 320mm×90mm
・配置 導体間の離隔230mm(本体室側 390mm)
・絶縁処理
1層目:ポリイミドテープ
2層目:自己融着シリコンゴムの高圧絶縁用テープ
3層目:紫外線硬化FRPプリプレグシート
の3層構造とする
施工においては、SUS製スリーブに導体3本を配置して無収縮モルタルを充填するまでの作業を予め工場で行い、現地作業を軽減するなど施工方法の改善を図り、厳しい制約下での施工を可能としました。(図2、写真1参照)

図2 プレハブ導体(3導体)
写真1 プレハブ導体(3導体)
今回、当社が検討および開発を行ったTFコイル用の大電流・高圧絶縁導体は、客先仕様書の電圧降下を満足させるだけでなく、安全面、品質面においても優れていると評価いただき、その貫通処理方法も含め、核融合発電において採用が期待できるものとなりました。今後も核融合発電の発展に貢献できるよう取り組んでまいります。
【工事概要】
工事名称 | 大電流フィーダの設計製作(第Ⅱ期) |
---|---|
施主・受注先 | 国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 |
工期 | 2015年10月 ~ 2018年5月 |
場所 | 茨城県那珂市向山801-1 国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 核融合エネルギー研究開発部門 那珂核融合研究所 内 |
以 上